2014年11月7日金曜日

本の話5 霧の子孫たち / 新田次郎

新田次郎さんは諏訪市出身の作者です。

以前「本の話」でも取り上げた、「武田信玄」もそうですが、代表作は「孤高の人」や映画にもなった「剣岳〈点の記〉」があります。

もっとも、今回ご紹介する「霧の子孫たち」は他とは少し趣が異なった作品です。



Salut!がある車山高原は、蓼科から白樺湖を経由し、霧ケ峰を抜け、美ヶ原へ至る観光道路「ビーナスライン」の近傍に位置するのですが、この小説は、そのビーナスライン建設に反対する「地元有志」と、建設を推進する「官」との戦いを題材にしています。

地元出身である新田次郎さんは、反対運動に参画する一方で、その出来事を小説に書き記したのです。

今となっては、ビーナスラインもスキー場も無い頃の、霧ケ峰高原一帯の風景を想像することは、難しいのですが、小説の描写では、春にはレンゲツツジやスズラン、初夏のニッコウキスゲ、秋にはマツムシソウやリンドウが一面に咲き誇っています。



実際、Salut!もビーナスラインとスキー場といった観光開発があってこそ成り立っていますので、複雑な気持ちにさせられました。


ビーナスラインは、美しい高原を刃物で切りつけて出来た深い傷のようなものかもしれません。

傷跡は決して消えることはありませんが、放っておけば、化膿して壊死してしまうのを、しっかり手当てして、保護することで傷跡が広がるのを防ぐことはできます。
僕たちに出来るのは、そのような事なのかなと考えさせられました。

この地で宿業を営んでいく以上、自覚を持って、霧ケ峰の自然を守るために何が出来るのか?考えて少しでも行動していこうと思います。

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